文法
エスペラントの冠詞 la|使う場合と省く場合
変化しない1語。英語の the に近い使い方ですが、日本語にはない冠詞なので、コツを押さえましょう。
エスペラントの冠詞は la(ラ)ひとつだけで、「その」「例の」にあたる定冠詞です。性、数、格によって変化しません。la domo は「その家」、la domoj は「それらの家」、la domojn は「それらの家を」(目的語)。不定冠詞はなく、domo は「(ある)家」、または単に「家」の意味になります。
16か条の第1条がこれを定めており、初心者は最初 la を省いてもよいとまで書かれています。実際には、流暢な話し手は誰でも la を使い、使い方は英語の the に近いものです。
日本語話者にとっての冠詞
日本語には冠詞がありません。「犬」は、ある犬でも、さっき話した犬でも、犬というもの全体でも、同じ「犬」です。そのため、日本語話者の間違いは、次の2通りに分かれます。
- la を全部省いてしまう。
- 逆に、名詞の前に何でも la をつけてしまう。
日本語の感覚で la の目安をつけるなら、「その〜」「例の〜」「あの〜」と言いたくなるときは la、「ある〜」と言いたくなるときは la なしです。
| 日本語の感覚 | エスペラント |
|---|---|
| 犬を見ました。その犬は黒かったです。 | Mi vidis hundon. La hundo estis nigra. |
| ある犬が吠えています。 | Hundo bojas. |
| 太陽(ひとつしかないもの) | la suno |
日本語で言えば、さっき話に出てきた犬が「その犬」になり、初めて出す犬は「犬が」とだけ言う感覚です。日本語の助詞「は」と「が」の使い分け(すでに話題になったものは「は」、初めて出すものは「が」)も、la の感覚に近いものです。ただし完全には一致しないので、あくまで目安にしてください。
la を使う場合
聞き手が、どの物を指しているのかわかるときに la を使います。PMEG は、la の意味を「どれのことか、あなたは知っている」と要約しています。
| 状況 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| すでに話に出た | Mi vidis hundon. La hundo estis nigra. | 「犬を見ました。その犬は黒かったです。」 |
| 状況から明らか | Mi luis aŭton, sed la radio ne funkciis. | 「車を借りましたが、(その車の)ラジオが動きませんでした。」 |
| 文中で限定される | la ĉapelo de mia patro | 「父の帽子」 |
| ひとつしかない | la suno, la ĉielo | 「太陽、空」 |
| 最上級 | la plej alta monto | 「最も高い山」 |
| -a で表す言語名 | la angla, la pola | 「英語、ポーランド語」 |
| ふつうの語でできた名前 | la Nigra Maro, la Alpoj | 「黒海、アルプス山脈」 |
la angla のような言語名は、la angla lingvo(英語)の短縮です。そのため、英語と違って la が必要になります。日本語は la japana です。たとえば「私は日本語を勉強しています」は Mi lernas la japanan. になります。
la を使わない場合
- 新しいもの、不特定のもの。 Hundo bojas. は「犬が吠えています」。
- ほかの限定詞があるとき。 mia、tiu、ĉiu などの語は、すでに名詞を特定しています。mia libro は「私の本」、tiu domo は「あの家」。la mia libro や la tiu domo とは言いません。
- ほとんどの固有名詞。 Petro、Londono、Japanio(日本)、そして Esperanto 自体にも使いません。Mi lernas Esperanton. は「私はエスペラントを勉強しています。」
- 一般的なこと。 Mi trinkas kafon. は「私はコーヒーを飲みます。」 La kafo estas varma. は「そのコーヒーは熱いです」(特定のコーヒー)です。
所有形容詞に la をつけると、単独で「〜のもの」の意味になります。Via aŭto estas ruĝa, la mia estas blua. は「あなたの車は赤く、私のは青いです。」詳しくは代名詞を参照してください。
種類全体について話すとき
動物や物の種類全体を語るには、3通りの言い方があります。
- Ĉevalo estas besto. – 「馬は動物です。」
- Ĉevaloj estas bestoj. – 「馬は動物です。」
- La ĉevalo estas utila besto. – 「馬は役に立つ動物です。」
PMEG によれば、la のない形が最も普通です。la をつけると、種類全体を「ひとつの知られた個体」のように示し、少し改まった響きになります。日本語は「馬は動物です」と、どの場合でも同じように言えるので、日本語話者は la なしの形から使い始めれば安全です。
特別な使い方
- 体の部分や衣服。 持ち主が明らかなとき、所有形容詞の代わりに la を使います。Li levis la manon. は「彼は手を上げました。」日本語も「彼の手」と言わず「手を上げた」と言うので、同じ感覚です。
- 既知のグループの「全員」。 La gastoj eksidis. は「客たちは席につきました」(全員が)。
- 王や皇帝の名前。 la は名前のあとに来ます。Karolo la Granda は「カール大帝」。
短縮形 l'
第16条は、la の代わりに l' を認めています。PMEG が勧めるのは、de, pri, tra, je のように母音で終わる前置詞のあとだけです。de l' mondo は「世界の」、pri l' amo は「愛について」。
別の語として書きますが、前置詞といっしょに、ひとまとまりで発音します。詩や歌以外ではまれで、話し言葉ではほとんど現れません。
la と英語の the の比較
| 点 | 英語 | エスペラント |
|---|---|---|
| 不定冠詞 | a, an | なし:libro「(ある)本」 |
| 言語名 | English | la angla |
| 体の部分 | his hand | la mano がよく使われる |
| 国名 | the Netherlands | Nederlando、冠詞なし |
| 格や数による変化 | なし | なし:la domojn |
「1つの」「ある特定の」を強調したいときは、unu や iu を使います。Iu viro telefonis. は「ある男性が電話をしてきました。」相関詞を参照してください。
例文
- La suno brilas. – 「太陽が輝いています。」
- Mi aĉetis libron. La libro estas tre interesa. – 「私は本を買いました。その本はとても面白いです。」
- Ĉu vi vidis la ŝlosilojn? – 「鍵を見ましたか?」
- Hundoj estas fidelaj bestoj. – 「犬は忠実な動物です。」
- La hundo estas fidela besto. – 「犬という動物は忠実です。」
- Mi ŝatas muzikon. – 「私は音楽が好きです。」
- Esperanto estas facila lingvo. – 「エスペラントは易しい言語です。」
- La esperanta lingvo naskiĝis en 1887. – 「エスペラント語は1887年に誕生しました。」
- Mi loĝas en la ĉefurbo de Pollando. – 「私はポーランドの首都に住んでいます。」
よくある質問
エスペラント語に「a」「an」にあたる語はありますか?
ありません。la のない名詞は不定です。libro は「(ある)本」。「1つの」「ある特定の」を強調するには、unu か iu を使います。
日本語に冠詞がないのに、la はどう使い分けますか?
「その」「例の」と言いたくなる、すでにわかっているものには la をつけます。初めて出すものや一般的なものにはつけません。迷ったら、la なしから始めても意味は通じます。
複数形や対格で la は変化しますか?
変化しません。la には -j も -n もつきません。la grandajn domojn は「その大きな家々を」(目的語)です。変わるのは名詞と形容詞だけで、名詞と形容詞で説明しています。
エスペラント語の l' とは何ですか?
la の短縮形で、第16条が認めています。主に詩や歌で、de や pri などの前置詞のあとに現れます。de l' mondo は「世界の」です。
「la Esperanto」と言いますか?
言いません。Esperanto は固有名詞です。Mi parolas Esperanton. は「私はエスペラントを話します。」-a で作る言語名には冠詞をつけます。la angla は「英語」。
出典
- Fundamento de Esperanto:第1・16条(英語版) – エスペラント・アカデミー
- PMEG の la の章:基本規則、個体、既知のもの、種類、特別な使い方、固有名詞
- Apostrofo: normal use – PMEG
- Esperanto grammar – Wikipedia(英語)
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